“あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい”を誤用する日本人
“あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい”
これは、『ヨハネによる福音書』8章の有名なイエスの言説である。
しかし、未だにこの言葉を誤用する人間が絶えていないようで、これは刑事犯例におけるいわゆる推定無罪とは事情が違う。
そもそも『ヨハネによる福音書』を正しく読めば、8章3節で登場する罪の女は律法学者やファリサイ派によって、イエスを試すために連れてこられた女だという事がわかる。
ユダヤ教聖書(旧約聖書)の『出エジプト記』で、モーセが授かった十戒には(カトリック、プロテスタント、正教会、ルター派などで内容に若干の差はあるものの)概ね全て“あなたは殺してはならない。”と“あなたは姦淫してはならない。”の二つの項目がある。
また、同じくユダヤ教聖書『レビ記』20章にはモーセが主より死刑に関する規定を授かった章であり、特に10節と27節には以下の内容がある。
“人の妻と姦淫する者、すなわち隣人の妻と姦淫する者があれば、その姦夫、姦婦は共に必ず殺されなければならない。”
“男または女で、口寄せ、または占いをする者は、必ず殺されなければならない。すなわち、石で撃ち殺さなければならない。その血は彼らに帰するであろう』」。”
『出エジプト記』の十戒では殺人と姦淫が禁止され、『レビ記』では姦淫したものを石打ち(当時の処刑方法)の刑に処せとしているのである。
つまり、当時の敬虔なユダヤ教徒ほど、この反する二つのユダヤ法を解釈し守る事ができず、その場を立ち去るしかなかったのであろう。
また、立ち去ったのは衆人のみで、この最初の問答をイエスに投げかけた律法学者とファリサイ派との間での問答は続いている。
参考文献:
ユダヤ教聖書(旧約聖書)、新約聖書は下記のサイトを引用させていただきました。